当院の取り組み
栄養管理
経管栄養
経管栄養の際に問題となりやすい合併症として、胃食道逆流・下痢があります。特に胃食道逆流は、経管栄養剤の大量嘔吐による窒息や誤嚥性肺炎にもつながるとても怖い合併症で、経管栄養の患者さんの20%に生じるとも言われています(図9)。
胃食道逆流・下痢の予防対策として、①栄養剤の注入速度を遅くする、②体位調整(30度半坐位)、③薬物療法、④半固形化栄養剤の使用などがあります。しかし、①②の対策は長時間の安静が必要となるためリハビリや離床の妨げとなってしまい、③は効果が限定的です。現在、胃食道逆流・下痢に最も効果があると言われているのが、④の半固形化栄養剤の使用です。
半固形化栄養剤は嘔吐や下痢を予防・改善するだけでなく、液体に比べて注入時間を大幅に短縮できるというメリットもあります。注入時間が短くなると、離床やリハビリ時間を延長することができ、介護負担も減ります。
半固形化栄養剤は液体の栄養剤に比べてコストが高く病院側の都合で敬遠されることが多いようですが、当院では経管栄養の患者さんには原則的に半固形化栄養剤を提供するようにしています。胃食道逆流・下痢のリスクから患者さんを守り、より安全にリハビリを進めていきたいと考えているからです。
胃食道逆流に対する半固形化栄養剤の効果
臥床すると液体のバリウムが胃から食道に逆流している(左の写真)
半固形化したバリウムでは胃食道逆流がほとんど認められなくなった(右の写真)
嚥下調整食
当院では日本摂食嚥下リハビリテーション学会が提唱している「嚥下調整食分類2021」をベースに5段階の食形態の食事を、患者さんの摂食嚥下機能の回復状況に合わせて提供しています。
嚥下調整食というと安全性ばかりが強調され、見ただけで食欲が失せてしまうものを想像してしまうかもしれませんが、当院では食べる楽しみ、食べる喜びを感じていただけるよう、食感や盛り付けに様々な工夫をしています。
定期的に栄養士と言語聴覚士・医師が嚥下調整食の試食会を開催し、新メニューの開発や、既存のメニューのさらなる質向上に取り組んでいます。
食事へのこだわり
当院では、「体をつくる基礎はおいしい食事から」という理念のもと、食事の質向上に取り組んでいます。食事は、1日3食とも選択食を取り入れ、和食・洋食ともホテル出身のシェフや割烹料理出身の和食の調理師が、腕によりをかけた食事を提供しています。
食事時間には、食堂に隣接したパントリーで、提供する直前にご飯が炊きあがり、陶器の器を使用し、盛り付けてすぐ提供するなど、なるべく家庭に近い環境で食事を楽しんで頂けるような環境作りをしています。